「何を見てるの?そんなに夢中になって?」
西尾聡雄は部屋に入るなり、青木岑が彼のデスクの前に立っているのを見た……
「これよ、まだ持ってたの?すごく醜いわ……」写真を指さしながら、青木岑は笑った。
「誰がそう言ったの?僕はこの時が一番綺麗だと思うよ」
「じゃあ、今の私は綺麗じゃないってこと?」
「もちろんそうじゃない。ただ過去の素敵な思い出を残しておきたいだけだよ。時々取り出して、失われた時を偲ぶために。この写真は僕にとってとても大切なんだ」西尾聡雄は直接は言わなかったが、アメリカでの7年間、この一枚の写真だけが青木岑を思い続けた春夏秋冬を乗り越えさせてくれたのだ。
しかし青木岑は彼の目つきからすべてを察していた……
彼女は甘えるように西尾聡雄の首に腕を回し、「あの写真はよくないわ。何年も前のものだもの。そのうち時間があったら、ウェディング写真を撮りに行きましょう」
「ウェディング写真はモルディブで丁寧に撮らないとね。適当にはできないよ」西尾聡雄は愛おしそうに彼女の頬にキスをした。
「朝のミーティングはどうだった?順調?」
「毎日同じさ……」西尾聡雄は言い終わると、オフィスチェアに座り直し、ノートパソコンを開いて一日の株式市場の動向を確認した。
「あなた、話があるの」
「なに?」
「午後、東陶町まで車で行きたいんだけど」
「東陶町?あの件を調べに?」西尾聡雄は彼女の目をじっと見つめて尋ねた。
青木岑は頷いた……
「今は行かないで。既に人を派遣して調べさせてある」
「え、調べたの?いつの話?」青木岑は少し驚いた様子だった。
「昨日返事が来たばかりだ」
「なのに何も言ってくれなかったのね……」青木岑は少し不満げだった。結局のところ、これは彼女にとってとても重要な事だったのだから。
西尾聡雄は数秒黙った後、引き出しから茶封筒を取り出し、青木岑に投げ渡した。
「全部ここにある。自分で見てみて。良い知らせじゃないから、急いで話さなかったんだ」
青木岑は急いで茶封筒を受け取り、中の資料を見始めた。表情は次第に暗くなっていった……