第456章：虎は牙を剥かない（6）

青木岑は首を振って言った。「話すつもりはないわ。母は体が弱いから、ショックに耐えられないの。私が実の娘だと思い込んでいるから、真実を告げたら耐えられないと思うの。幸治にも話すつもりはないわ。こういうことは一度話してしまうと、多くの感情を壊してしまうから。それに、まだ実の両親を見つけていないし、連絡が取れた時に、ゆっくり話せばいいわ」

「うん、そうだね」

「あなた、時間があったら、また東陶町に行きたいの。手がかりを探して...それに...私が生まれた町を見てみたいの。実の両親が私を産んだ場所だと思うと、自分の目で確かめたくなるの」

「いいよ。この忙しい時期が過ぎたら、一緒に行こう。気に入ったら、数日滞在してもいいよ」

青木岑は頷いた...

昼時、青木岑は会社で西尾聡雄と一緒に社食を食べ、午後、西尾聡雄は工事現場の視察に行った。

青木岑はタクシーで帰宅し、休暇を利用して大掃除をしようと思っていた。

しかし、思いがけず神谷香織から電話がかかってきた...

彼女は特有の声で甘く言った。「岑、会いましょう。伯母さん、あなたに話があるの」

青木岑は少し考えてから、会うことにした。もし会わなければ、彼女たちが南区まで来てしまう可能性があるから。

そうなると仕事に支障が出てしまう...

市の中心部にある高級カフェで、青木岑が入ると、神谷香織と青木婉子が既にいた。

神谷香織は月白のチャイナドレスを着て、優雅な姿で、肌の手入れも行き届いていた。

青木婉子は真っ赤なオーガンジーの姫様ドレスを着て、大きなウェーブの髪型で、妖艶で魅惑的だった。

「何の用？」青木岑は近寄って単刀直入に尋ねた。

「岑、座って。ウェイター、彼女にオレンジジュースを」神谷香織が勝手に注文した。

「結構です。水で十分です」

「そう、ウェイター、彼女に水を」神谷香織はその後、青木岑を見て微笑んだ。

「ますます綺麗になったわね...」珍しく青木岑を褒めた。

これは何か企んでいるに違いない...

青木岑は母娘を見て言った。「用件があるなら直接言ってください。回りくどい話は好きじゃありません」

「母さんがあなたを呼び出すなんて、あなたの運がいいってことよ。グズグズ言わないで、私たちの言うことを聞きなさい」青木婉子は青木岑を睨みつけた。