「私は岩本奈義です。今、あなたの病院の屋上にいるのですが、少しお話できますか?」
「岩本さん、私はあなたとそれほど親しくないと思いますが」
「お話があります。以上です」そう言うと、青木岑が口を開く前に、岩本奈義は電話を切った。
青木岑も呆れた。岩本奈義は今をときめく女優だということは知っていた。
たまに家に帰った時に、彼女が出演している時代劇をいくつか見たことがあり、演技は上手かった。
しかし...彼女とは生活の中で関わりたくなかった。前回彼女が投げつけたバッグの一件以来。
彼女に良い印象を持てず、あの女は手ごわい相手だと感じていた。ただ、彼女と桑原勝の間には何もないので、岩本奈義のことは気にしていなかった。もし誰か西尾聡雄を奪おうとする女がいれば、きちんと対処するつもりだった。