「会いに来たわ」
「私に会いに来たの?笑わせないで。私がどれだけ惨めに暮らしているか見に来たんでしょう。あなたのおかげで、私は全然惨めじゃないわ。自由気ままに暮らしていて、子供たちが誰かに圧迫されて最後に何も残らないなんて心配する必要もない。娘はもう就職して自立しているし、息子も大學に進学したわ。三人で幸せに暮らしているの。だから、神谷様、さっさと出て行って。ここにはあなたの居場所なんてないわ」
「ねえ、この老女、母さんに向かってなんて口の利き方するの?」
永田美世子は青木婉子を一瞥した。「まさに青木源人の血を引く子ね。見た目が似てるだけじゃなく、性格まで同じ。生意気で強情。このままじゃ嫁に行けないわよ」
「誰が嫁に行けないって言ったの?この老いぼれ」
「婉子、失礼な態度は止めなさい……」神谷香織は即座に青木婉子の暴走を止めた。