「リック。」
リックを見かけた西尾聡雄は立ち上がり、歩み寄って、その長身のハンサムなハーフの男性と肩を軽くぶつけ合い、男同士特有の挨拶を交わした。
「来るなら事前に言ってくれれば、準備できたのに。」
「いや、親友と妻を連れて、ちょっと寄っただけだから。」
リックは頷き、西尾聡雄と少し言葉を交わしてから立ち去った……
しばらくすると、ウェイターたちが次々と入ってきて、十数個の豪華なフルーツプレート、ビール、ワイン、洋酒がテーブルいっぱいに並べられた。
その中には、ロイヤルサルートが2本……
ロイヤルサルートについては佐藤然も知っていた。これはロイヤルサルート50年で、市場価格は一万ドル、人民元に換算すると約百十二万円ほどで、世界限定255本。このオーナーは本当に気前がよく、こんな高価なお酒を送ってきたものだ。
西尾聡雄との付き合いが深いということだろう……
佐藤然は思わず唾を飲み込んだ。「すごいじゃないか、お前、ここのボスと知り合いだったなんて。あいつは変わり者で、外部の人間とほとんど接触しないんだ。とても謎めいた人物で、やくざの背景があるんじゃないかと疑って、長い間調べてたけど、何も分からなかった。」
「リックの家族は、私がアメリカにいた時からの知り合いだ。帰国してからはあまり連絡を取っていない。結局、彼の経営範囲と私のは違うからね。」
西尾聡雄はリックについてこれ以上話したくないようだった。青木岑はそれを察し、佐藤然がさらに質問するのを恐れて。
話題を変えて言った。「バースデーケーキ、買い忘れちゃったんじゃない?」
「あっ……そういえば、本当に忘れてた。」熊谷玲子はようやく気付いた。
「それなら簡単だよ。署の人に電話して買ってきてもらおう。」佐藤然は電話をかけようと立ち上がった。
そのとき、ウェイターがノックして入ってきて、3段のケーキを運んできた。とても豪華だった……
「オーナーの指示です。どうぞごゆっくり。」
「まるで神様みたいだな、誰かの誕生日まで知ってるなんて。」佐藤然は不思議そうに西尾聡雄を見た。
「さっき僕が言ったんだ、準備してもらうように。」西尾聡雄は淡々と答えた。
「なるほど……お前が言ったのか。さすが気が利くな。」佐藤然は西尾聡雄の肩を叩いた。