第500章:断ち切れない毒(10)

少し躊躇した後、青木岑は電話に出た……

彼女は電話に出ながら、携帯を持って個室から出て行った……

「もしもし?」

「岑、お誕生日おめでとう」電話の向こうで、寺田徹の声はかすれていた。

「ありがとう」青木岑の声は冷たく距離を置いていた。

「岑、会いたい」

「寺田徹、一つ言っておきますが、あなたは今、吉田秋雪の夫で、もうすぐ彼女の子供の父親になるんです。自分の立場をよく覚えておいてください」

この時、寺田徹から会いたいと言われ、青木岑は少し笑いたくなった……

かつて彼女が一番助けを必要としていた時、彼は何をしていたのか?落ちぶれた者を踏みつけるのが彼の本性だった。

「岑、本当に後悔している……あの時、君の説明を聞くべきだった。君を信じないで、君を傷つけるようなことをしてしまって。もう許してくれないのは分かっている。でも、本当に後悔しているんだ。分かってくれるかい?いつも悔しくて、胸が苦しいんだ。天が与えてくれたこんなに素晴らしい女性を、どうして大切にできなかったんだろう」

寺田徹はおそらく酒を飲んでいたのだろう、そのため声には多少興奮した調子が混ざっていた。

青木岑はただ静かに聞いているだけで、何の感情の動きも見せなかった……

「この世界には……後悔薬なんてないわ。人生は一方通行の列車で、誰もが自分の選択に責任を持つの。たぶんこれが運命なのよ。誕生日の祝福ありがとう。それと……もう電話しないで。私たち、挨拶する必要もないから」

言い終わると、寺田徹の返事を待たずに、青木岑はきっぱりと電話を切った……

彼女は決断の早い人で、一度別れを決めたらグズグズと引きずることはなかった……

そして別れた後に友達になることもできなかった。結局のところ、過去の出来事を受け入れられるほど大きな心は持ち合わせていなかったから。

今は電話番号の実名登録制度がなければ、とっくに番号を変えていただろう。寺田徹が思い出したように電話をかけてくるのは、本当に迷惑だった……

幸い西尾聡雄はそれほど小心者ではないから、二人の間に誤解を生むようなことはないだろう……

ナイトクラブの廊下で、青木岑は電話を切り、すぐに戻ろうとした時。

突然後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。「岑ちゃん」