「ああ」桑原勝は頷いた。
青木岑がそこまではっきり言うなら、これ以上遠慮するのは却って気取りすぎだろう。
桑原勝は青木岑が高い知能を持っていることを知っていた。自分が手加減しなくても、彼女は必ず勝ち進んでいくだろう……
「始めましょう」青木岑はカードを配るディーラーを見て言った。
ディーラーは白い手袋をはめ、二人にカードを配り始めた。20ポイントのルールはより単純だった。
一人一回ずつ配り、20ポイントに近い方が勝ち、もちろん20ポイントぴったりが最高だ。
オーバーしたら負け、相手は自分でカードを追加するかどうか選べる……
ディーラーは最初に桑原勝に配った。桑原勝はすぐにテーブルに広げた。ハートの9だった。
ディーラーは次に青木岑に一枚配った。スペードの6だった。
桑原勝は「続けて」と言った。
ディーラーはさらに一枚配った。7だった。7+9で16になり、すでに20ポイントに近づいていた。
その後ディーラーは青木岑にもう一枚配った。10だった。6+10でこちらも16で、同じく20ポイントに近かった。
見ていた熊谷玲子の心臓は激しく鼓動していた。もちろん青木岑の勝利を祈っていた。
ディーラーは同じポイント数を見て、桑原勝に尋ねた。「もう一枚引きますか?」
「続けて……」桑原勝は冷静に答えた。
ディーラーはもう一枚配った。Kだった。20ポイントゲームではJ、Q、K、Aは全て1ポイントなので、桑原勝は今17になった。
ディーラーは青木岑にも尋ねた。「もう一枚引きますか?」
「はい」青木岑も冷静だった。
観衆はため息をつき、二人のために冷や汗をかいていた。
ディーラーは青木岑にもう一枚配った。3だった。16+3で、瞬時に19ポイントになった。
熊谷玲子は興奮のあまり、佐藤然の襟をつかんで叫んだ。「ねえ、勝ったわよ!」
「姉さん、見えてるよ。目が見えないわけじゃないんだから」佐藤然は諦めたような表情で、襟は熊谷玲子につかまれてしわくちゃになっていた。
ディーラーは桑原勝を見て「まだ続けますか?」と尋ねた。
「もちろん」桑原勝は自信満々だった。
「しかしお客様、すでに17ですよ。続けると、オーバーする可能性があります」ディーラーは親切に注意した。
「相手が19ポイントなら、このままでも負けだ。だから賭けてみよう」