「私が派遣した者が、あなたが生まれた診療所を調べました。門番をしていた伯父さんがいて、その人はとても正直な方で、診療所で10年間門番として働いていたそうです。その後、姪に連れられて南の方で老後を過ごすことになり、数日前に東陶町に戻ってきたばかりです。住所と情報を確認したところ、何か手がかりになりそうです」と西尾聡雄はゆっくりと話した。
青木岑は気分が良くなり、すぐに西尾聡雄の手を引いて外へ向かった……
「時間を無駄にはできません。早く行きましょう」
「マイバッハは使わないの?」階下で、西尾聡雄がフォルクスワーゲンCCに乗り込むのを見て、青木岑は少し疑問に思った。
マイバッハの方が早いのではないだろうか?
「先に乗って、説明するから」西尾聡雄は彼女を見つめた。
青木岑は察して、助手席に座り、シートベルトを締めた。そして車はゆっくりと御苑を出発した。
「この件は少し怪しいと思えて、誰かが意図的に邪魔をしている可能性があります。万が一に備えて、目立たないようにする必要があると思います。東陶町は人口5万人に満たない小さな町で、あまり発展していません。ベンツやBMWもめったに見かけないので、マイバッハは目立ちすぎると思い、人目を引くのが心配でした」
「よく考えてくれているわね。私が焦りすぎていたわ……」西尾聡雄の言葉を聞いて、青木岑は背筋が寒くなる思いがした。
親族を見つけたい気持ちが強すぎて、多くのことを見過ごしていたのかもしれない。
前回、西尾聡雄が言ったように、多くの有用な手がかりや人々が不可解な形で消えたり、亡くなったりしている。
記録が保管されていた場所も大火事で何もかも焼け落ちてしまい、これらすべてが偶然とは思えなかった。
おそらく、背後で黒い手が全てを操っているのだろう。だから東陶町での調査は大々的にはできない。
まずは目立たないように……
フォルクスワーゲンCCもそれなりのスピードが出せた。二人は高速道路を使わず、一般道を選んで、2時間もかからずに東陶町に到着した。
着いた時には、すでに日が暮れていた……
小さな町は都会とは違い、日が暮れても明るくはない。
人口が少ないため、町の商店も早めに閉まってしまう。
「直接あの伯父さんの家に行くの?」青木岑は少し緊張した様子で尋ねた。
「ああ」