第28章:東陶町の真相(8)

「手放すだって?絶対にありえない」桑原勝は激しく洋酒を一気に飲んだ。

「なぜそこまで……ふふ」

「俺、桑原勝が決めたことは、途中で投げ出すようなことは絶対にない。俺は卑怯な手は使わない。堂々と青木岑を奪うだけだ。彼女が俺のことを好きじゃなくても構わない。待てばいい。彼女が離婚するのを、西尾聡雄と別れるのを、そして少しずつ俺のことを好きになってくれるのを。どうせ時間はたっぷりあるんだ、本当に構わない……」そう言って、桑原勝は再び一気に酒を飲み干した。

青木重徳には分かっていた。彼の機嫌が相当悪いということが……

「私の岑妹は、悪魔なんだよ……絶世の美貌があるわけでもなく、強大な身分や背景があるわけでもないのに、彼女に近づく者は皆、彼女から離れられなくなってしまう……」青木重徳は感慨深げに言った。

「たとえ悪魔でも、必ず娶る……この人生で、青木岑を娶れなければ、決して諦めない」

パンという音と共に、空き瓶が桑原勝によって茫漠たる海に投げ込まれた……

この男は意地になっているようだった。幾度も挫折を味わいながらも、諦めるどころか、むしろ挫折するほどに意志を強めていった。

「その精神には本当に感服せざるを得ないな、はは」青木重徳は大笑いした。

「俺のことはいいだろう。お前だって彼女に対して特別な感情を持っているじゃないか?」桑原勝は率直に言った。

「そうだね、私は彼女のことが大好きだよ」青木重徳も隠すことなく認めた。

「でも彼女はお前の妹じゃないか。たとえお前が青木家の人間じゃなくても、名目上はその関係があるんだ……余計な混乱は起こさないでくれ。俺一人で奪えばいい」

「ふふ……早く成功することを祈るよ」青木重徳はそれ以上何も言わず、ただ軽く笑った。

彼がクルーズ船に乗った時、ちょうど青木岑がカードを配るシーンを目撃していた。

桑原勝の敗北はすでに必然だった……

ただ、彼は桑原勝がここまで深く落ちていくとは思わなかった。西尾聡雄と青木岑の愛が固い絆で結ばれていることを知りながらも、手放す気配がない。

桑原勝と青木重徳はデッキで泥酔するまで飲んだ……

下りてきた時は、関口遥に担がれて戻ってきた。

つまり、桑原様の友人になるというのは、本当に心配の種なのだ……