「今日はいくら勝ったの?」桑原勝は本当は大声で『青木岑、好きだ』と叫びたかったのだが、決定的な瞬間に怖気づいてしまい、青木岑の目を見つめながら、告白するはずだった言葉を「今日はいくら勝ったの?」という、かなり素っ気ない言葉に変えてしまった。
「二十万円くらいかな」
「ああ、そう」
「じゃあ、私行くわ。何かあったら連絡してね」そう言って、青木岑は甲板から降りた。
桑原勝は部屋に戻ると、思いがけず上機嫌で、口笛を吹いていた……
関口遥はシャワーを浴びて貴妃寝椅子に横たわりながら笑って言った。「彼女に会えて、満足したの?」
「うん、満足した」桑原勝は隠そうともしなかった。
「さっきの君の彼女への眼差しがどんなだったか、自分でわかってないでしょ?」
「どんな眼差し?」桑原勝は不思議そうに関口遥を見た。