彼はペン立てから黒いボールペンを取り出し、慎重に青木岑の顔に描き始めた……
両側に三本ずつ、青木岑に可愛らしい大きな髭を加えた……
看護師さんは笑いを堪えきれず、でも笑えないので、ずっと口を手で押さえていた。
描き終わった後、桑原勝はまだ満足できず、仕上げに青木岑の額に「王」の字を書き加えた。
まるで血まみれの可愛い子虎のよう……
今度こそ、桑原勝は満足げに、慎重に携帯を取り出し、マナーモードに設定した。
そしてカシャッと一枚、青木岑のこの瞬間を撮影した……
チャリティーイベントの写真を除けば、これが二枚目の青木岑の単独写真だった。彼は確信していた、これは西尾聡雄も持っていない限定版だと。
いたずらを終えた後、桑原勝は二万円を看護師さんに渡した。口止め料なのか、悪事への加担料なのかは不明だった。
そして黒いランボーで颯爽と去っていった……
ギャンブラー号であの日負けたルイ14世のことなど、少しも惜しくは感じなかった。
今日は一枚の写真のために、まるで子供のように喜んでいた。
桑原勝は突然気づいた、青木岑は既に彼の人生になくてはならない存在になっていることに……
「見てよ」と携帯を助手席の関口遥に渡した。
「プッ……ハハハハ、可愛い、これお前がやったのか?」
「うんうん」桑原勝は誇らしげに頷いた。
「彼女が目覚めたら激怒するんじゃない?仕返しされるかもよ?」
「むしろ仕返しに来てくれることを期待してるよ。そうすれば彼女に会えるチャンスが増えるからね」桑原勝は上機嫌だった。
その時、関口遥が突然言った。「あ、すまん。手が滑って消しちゃった」
キーッという音と共に、桑原勝はブレーキを踏み、路肩に停車した……
そして二言目には関口遥の首を掴んで絞めにかかった……
「ハハハハ……冗談だよ、やめて、やめて、痛い……」関口遥も命知らずだった、よくもこんな事で桑原勝と冗談を言えたものだ。
桑原勝が青木岑の写真をどれほど大切にしているか、天知る……
「聞いたところによると、青木岑は学生時代『青木美人様』というあだ名があったらしいぞ」
「それがどうした?」桑原勝は尋ねた。
「美人様についてはこう解釈してるんだ。この世に元々美人様なんていない。彼女と寝たいと思う男が多くなれば、それで美人様になるんだと」
桑原勝:……