スペードエースだ。つまり、最高の点数である15点だ。
「これで桑原坊ちゃんは負けが確定したな...」
「そうだね、桑原坊ちゃんは厳しい状況だ。最後の勝負だし」
「桑原坊ちゃんもエースを引けるかどうか、難しそうだ」
皆が次々と意見を交わし、緊張感が漂っていた...
「桑原社長、あなたの番です」とディーラーが促した。
桑原勝はゆっくりとカードの上に歩み寄り、じっくりと見つめた。
カードを取っては置き、置いては取り、何枚も変えながら、皆の心臓をハラハラさせた。
最後には自分でも少し苛立ちながら、一枚を取り上げ、テーブルに叩きつけた。
「ふん、これにしよう」
そしてカードをめくると、皆は呆然とした...
なんとこちらもエース、ハートエースだった。
つまり、第三戦は引き分け...
「これは...第三戦は引き分けと宣言します」ディーラーは確認して結果を発表した。
「両者それぞれ千五百万ドルの賞金を受け取ることを提案したいのですが、いかがでしょうか?」外国人重役が仲裁役として提案した。
「申し訳ありませんが、私は引き分けが嫌いなんです。勝負をはっきりつけたい。勝者と敗者、白黒はっきりさせたいんです」桑原勝は傲慢な口調でそう言った。
しかし誰も不思議に思わなかった。彼が桑原勝であり、桑原家の人間だからだ。
彼は生まれながらに傲慢だった...
「私も同感です」西尾聡雄は桑原勝の得意げな顔を軽く見やった。
「それならば、もう一戦追加してはいかがでしょうか。お二人にもう一度カードを引いていただきましょう」重役が提案した。
西尾聡雄は近づき、見もせずにカードを一枚選び、開いてみると、またもやエース、ダイヤエースだった。
桑原勝も負けじと近づき、カードを一枚取り出してテーブルに伏せた。めくってみると、またもやエース、フラワーエースだった。
四枚のエースを、二人で全て引き当てた...
それでもまだ引き分けの状態で、この珍しい展開に皆が驚いていた。
下では大騒ぎになり、二人がカードの達人だと噂が飛び交った。
毎回エースを引くなんて、偶然や運では済まされない...
「桑原勝さん、すごく強いのね...」熊谷玲子が感心した。
「スターキングのボスの頭が良いのは当然だろう...西尾聡雄も手強い相手に出会ったな」佐藤然が呟いた。