「来るな……もう疲れ果てたから、寝るわ」
そう言うと、青木岑は服を脱がずに、そのまま西尾聡雄の胸に寄り添って目を閉じた……
「そうだな、ここは狭すぎて、いろんな体位が難しそうだ」と西尾聡雄は笑いながら言った。
青木岑は目を細めながら、拳を上げて西尾聡雄を軽く殴った……
「西尾様、あなたは下品すぎよ。おとなしく寝なさい……」
「お前、さっき……?」西尾聡雄は、さっき階下に長時間いた時の収穫について聞きたかった。
しかし青木岑が突然目を開けて、彼に意味深な視線を送った……
西尾聡雄はすぐに察して、話題を変えた。「さっき下で長話してて、寂しかったよ」
「もういいから、寝ましょう。明日また移動があるわ」
その後、二人は服を着たまま一晩眠った……
実は青木岑はあまり眠れなかった。常に誰かに見られているような気がして、落ち着かなかった。
後で疲れ果てて少し眠りについた時、奇妙な夢を見た。
永田伯父が黒猫を抱きながら古い家の前に座っていて、突然倒れて亡くなる夢だった……
そして一つの影が古い家の前に立っていて、姿は見えなかった……
青木岑がその後を追いかけようとして、長く走った後、目が覚めた……
朝六時
青木岑と西尾聡雄は起き上がり、朝食も取らずに急いで旅館を出た。
ガソリンスタンドで車を交換した後、青木岑はパンを二つとミルクを二本買った。
車に持ち込んで、二人で分け合った……
「昨日話してくれなかったのは、誰かに監視されているのを警戒してたの?」
青木岑は頷いた。「監視カメラがないとは限らないから。今は技術が発達してるし、あの女将もパソコンを使いこなしてたわ」
「何か分かったことは?」
「まず一つ言っておくけど、あの旅館は基本的に売春の拠点よ」
「なに?」西尾聡雄は飲んでいたミルクを吹き出しそうになった。
「本当よ、冗談じゃないわ……」
「どうやって分かったんだ?」この重大な情報に、西尾聡雄はしばらく消化できないようだった。
「まず……東陶町は流動人口が少ないから、あの旅館に客が来るはずがないの。それに、昨日私が出かけた時、隣室から黒い顔の大男が出てきて、私を変な目で見てた。後で私が階下に降りたら、彼も降りてきて女将を引っ張って話し込んでた。声は小さかったけど……私は読唇術ができるの」