「彼は公人なので、この件は外に漏らさないでください。それに、身分証明書で年齢を確認したでしょうが、それについても口外しないでください。芸能界では年齢は秘密なんです。これは些少のお礼です」
「結構です。秘密は守ります。ご安心ください。お金はお引き取りください。南区の職員として、それくらいの基本的なモラルは持ち合わせています」
「そうですか」青木岑が受け取らないのを見て、マネージャーもそれ以上は強要せずに立ち去った。
坂口晴人の身分証明書については、実際には見ていなかった。他人の年齢など、自分には関係ないことだから。
彼女はアイドルに興味がないので、以前から岩本奈義や飯島智といった女性タレントたちにも無関心だった。
桑原勝が入院していた期間中、ここは映画祭の開幕と重なり、毎日女優たちが見舞いに来ていた。