「あぁ......私の幻覚かしら?うちの西尾様がどうしてここにいらっしゃるの?」青木岑は笑いながら言った。
「君が恋しかったからさ」
西尾聡雄の口元には、ほんのりとした優しさが漂っていた......
もしこの瞬間、彼と目が合えば、きっとその優しい表情に溶けてしまうことだろう。
青木岑は何も言わず、すぐに飛びついた......
両手で西尾聡雄の首に抱きついて......
ここは個室のオフィスで良かった。普段は冷静そのものの看護師長の、
こんな甘えん坊な一面を誰にも見られることはない。
「今、仕事終わったの?」青木岑は顔を上げて笑顔で尋ねた。
「ああ」
「まだ食事してないでしょう?」
「してない」
「あぁ......どうしよう、私もう食べちゃったの。来るって分かってたら待ってたのに」
「大丈夫、お腹も空いてないし」