「母さん……私はちゃんと分かってます。私がバカじゃないと認めてくれたなら、私の判断力も信じてください、OK?」
「西尾……お母さんはね……」西尾奥さんの言葉は息子に遮られた。
「永田さん、母を外に案内して。疲れているから」西尾聡雄は冷たく命じた。
「はい、ボス」
「社長夫人、こちらへどうぞ。ボスには重要な書類の署名がありますので」永田さんは母子の戦いを慎重に見守りながら、どちらも怒らせないように気を付けた。
西尾奥さんは最後には仕方なく、歯を食いしばって出て行った……
西尾聡雄はその後も仕事に没頭し続けた……
退社時間が近づいた頃、彼はパソコンを閉じ、永田さんを見て尋ねた。「もし母親と妻が同時に溺れたら、誰を先に助ける?」
「えっと……ボス、冗談はやめてください」
「早く答えろ」西尾聡雄は急かした。
「もちろん母親です」永田さんは自信満々に答えた。
「そんなに親孝行なのか?」西尾聡雄は、普段妻を大切にしているように見える永田さんが迷わず母親を選んだことに意外な感じがした。
「だって、妻は泳げますから、へへ」
西尾聡雄:……
「今月のボーナス、全額カット」言い終わると西尾聡雄は立ち上がって外に向かった。
「ボス、そんなのありませんよ。答えが気に入らないからってお金を引くなんて、うぅ……じゃあ、もう一度答えます。妻を先に助けます」
「じゃあ来月のボーナスもなしだ。そんなに不孝とは」西尾聡雄は真面目な顔で言った。
またもや晴天の霹靂……
「ボス、ボーナスを引きたいならそう言ってくださいよ。次からこんな悩ましい質問はしないでください」永田さんは非常に不満そうだった。
「さっきの話は録音してある。後で妻に送って聞かせてやろう」
「うわっ……」永田さんの心は一瞬にして沸騰した。
「ボス、何でもしますから。命令してください。牛馬のように働きます……こんな苦しめ方だけはやめてください」
「牛馬のように働く必要はないが……これからは気をつけろ。母を勝手にオフィスに入れるな」
そういうことか、永田さんはすぐに安堵した……
「ご安心ください、ボス。次回西尾奥さんが来られたら、すぐに追い……いえ、お帰りいただきます。社長夫人が勝手にオフィスに入るのは絶対に阻止します。たとえ罵倒されても」永田さんはボーナスのために覚悟を決めた。