「まだよ。彼女は賢すぎるから、慎重に進めないと。まずは彼女と親密になって、信頼を得てからでも遅くないわ。西尾聡雄が彼女と結婚したってことは、相当大事に思ってるってことだし、彼女を手札として持っていれば、もう青木重徳を恐れる必要はないわ」
青木岑を使ってGKを動かし、青木重徳に対抗するのが、青木源人の最新の計画だった。
車の中で、青木岑は青木隼人に市街地のショッピングモールまで送ってもらおうと思っていた。生活用品を買いたかったからだ。
しかし途中で、見覚えのある人影が目に入った。
「止めて...」青木岑が突然叫んだ。
「おや?あれは君の異父弟、原幸治じゃないか?」青木隼人が嘲笑うように言った。
幸治は昨日まで今日は授業があるとLINEで連絡してきたのに、なぜ市街地にいるのだろう?
車が路肩にゆっくりと停まると、青木岑が降りる前に、幸治の前に若い女の子が歩いてくるのが見えた。
可愛らしいワンピースを着て、緩やかなカールの髪、甘い顔立ちの可愛らしい女の子だった...
あれは山田悦子じゃないか?青木岑の表情が複雑になった。やはり、自分の予想は当たっていた。
青木隼人もそれに気付いたようで、目を細めて言った。「へぇ、あいつ、意外と女たらしだな。目の付け所はいいぜ。あの子、滝沢ローラーに似てるな」
「青木隼人、あなた本当に気持ち悪い...」若いくせに下品な話ばかり。青木岑は、神谷香織が大金をかけて育てたこの息子は台無しだと思った。素養が全くない。
「俺が気持ち悪い?原幸治の方がよっぽど気持ち悪いだろ...学生のくせに、まともに勉強もせずに女遊びかよ。そんな資格あるのか?金稼いでんのか?お前からもらった生活費で遊んでるだけだろ?」
「黙りなさい...!」
「なんで黙らなきゃいけないんだ。言ってやる。お前ら貧乏人は最低だ。母さんが言ってたぞ、お前らは腹黒い女だって。今回帰ってきて手伝うのも、父さんの財産が目当てなんだろ?そうじゃなきゃ、ボランティアでもするのか?それと...言っとくけど、原幸治のことは生理的に無理なんだ。あいつの女をちゃんと見張っとけよ。もし俺のベッドに上がることになっても、お前の顔を立てられないからな。でも口出しすんなよ。結局俺もお前の弟なんだしな、ハハハ」
「青木隼人...幸治の好きな人に手を出したら、絶対に許さないわよ」