第70章:西尾聡雄の反撃(10)

「そうね、時には自分の行きたい道を選べないこともあるわ。天は私たちに選択の機会を与えてくれるほど慈悲深くはない。時には、努力する以外に選択肢がないの……」坂口晴人は憂鬱そうに言った。

「実は、そんなに辛く生きる必要はないのよ。仏教には『一念心清浄なれば、処処に蓮華開く』という言葉があるわ」

「一念心清浄なれば、処処に蓮華開く?」坂口晴人はその言葉を繰り返した。

「うん、後で時間があったらよく考えてみて。物事を深く考えすぎないほうがいいわ。深く考えすぎると逆に疲れちゃう。私は生活のルールはシンプルで直接的な方がいいと思うの。例えば、眠くなったら寝る、お腹が空いたら食べる、好きなら愛する。そうすれば少しは楽になるかもしれない」

坂口晴人はその言葉を聞いて何か心を動かされたようで、長い睫毛を揺らめかせた……

催眠ランプの光の下で、青木岑は突然、これは比類なく静かな美少年だと感じた。

若く、絶世の美しさを持ち、世の人々が羨むものを全て持っているのに、こんなにも不幸せに生きている。

思わず心が痛むほどだった……

「オンラインゲームが好きなの?」

「どうしてそれを?」坂口晴人は警戒して顔を上げ、青木岑を見た。

「あなたの掲示板でファンが言っていたわ。桃源郷という名前のオンラインゲームが好きだって。普通のオンラインゲームのような殺し合いではなく、人を殺すことが禁止されていて、天下太平で皆が幸せに暮らしているような世界なのよね」

「そうだね、そんな理想はゲームの中でしか実現できないよ」坂口晴人は苦笑いした。

「はい、これ」

青木岑は何かを手渡した……拳の中に握られていたので、何かはわからなかった。

「何?」坂口晴人は好奇心を持って尋ねた。

青木岑がゆっくりと手のひらを開くと、そこには一つのキャンディー、大白兔ミルクキャンディーが置かれていた。

「キャンディー?」坂口晴人は眉をひそめ、青木岑の意図が理解できないようだった。

「生活が辛く感じる時は、これを一つ食べてみて。効果があるわ」

「僕は子供じゃないよ。なんでキャンディーをくれるの」坂口晴人は面白そうに青木岑を見て、手を伸ばして受け取ろうとはしなかった。