第70章:西尾聡雄の反撃(10)

「そうね、時には自分の行きたい道を選べないこともあるわ。天は私たちに選択の機会を与えてくれるほど慈悲深くはない。時には、努力する以外に選択肢がないの……」坂口晴人は憂鬱そうに言った。

「実は、そんなに辛く生きる必要はないのよ。仏教には『一念心清浄なれば、処処に蓮華開く』という言葉があるわ」

「一念心清浄なれば、処処に蓮華開く?」坂口晴人はその言葉を繰り返した。

「うん、後で時間があったらよく考えてみて。物事を深く考えすぎないほうがいいわ。深く考えすぎると逆に疲れちゃう。私は生活のルールはシンプルで直接的な方がいいと思うの。例えば、眠くなったら寝る、お腹が空いたら食べる、好きなら愛する。そうすれば少しは楽になるかもしれない」

坂口晴人はその言葉を聞いて何か心を動かされたようで、長い睫毛を揺らめかせた……