「うん、友達に会いに行くの」青木岑は服を着ながら言った。
西尾聡雄は腕時計を見て、「遅すぎる。この時間は危ないから、送っていくよ」
「うん、ありがとう」青木岑は西尾聡雄の心配を理解していたので、断らなかった。
二人は一緒に階段を降り、西尾聡雄はマイバッハを運転して、月下倶楽部へ向かった……
「車で待っているから、飲みすぎないでね」西尾聡雄は心配そうに言い聞かせた。
「分かってるわ、西尾様。私、ちゃんと言うことを聞くから、ここで待っていてね」
青木岑は西尾聡雄の気遣いに感謝していた。中島美玖は女友達とはいえ、二人とはそれほど親しくなかったからだ。
熊谷玲子のように高校時代からの付き合いではなかった。
だから、西尾聡雄が車で待っているのが一番賢明な選択だった。遊び終わったら妻を家に連れて帰ればいい。
月下倶楽部は様々な人が出入りする場所だったが、リックの店だったので西尾聡雄は心配せず、一緒に入らなかった。
青木岑は急いで出てきたので、コーディネートする余裕もなく、黒い長めのパーカーを着て、下は黒いレギンスだけだった……
しかし実際、この深まる秋には、この服装では寒さをしのげない……
車を降りると、冷たい風が顔に当たり、青木岑は震えた。
そして小走りで月下倶楽部に入り、最上階の個室へ直行した。
「えっと?どの部屋だったかな?AかBかCかDだったっけ?」青木岑は中島美玖からの電話を受けた時、ぼんやりしていたので、よく覚えていなかった。
豪華な個室を見つめながら困惑していた……
中島美玖に電話をかけようと携帯を取り出した時、突然隣のB個室のドアが開いた。
胸の大きな矢野川がふらふらと出てきて、青木岑を見るなり目が覚めたような様子になった。
「看護師長……あれ、どうしてここに?私の目の錯覚?」
「友達に会いに来たの」青木岑は冷静に答えた。
「はは……もしかして桑原様?中にいるよ、早く早く……」矢野川はノリの良い人で。
青木岑が個室の前に現れるのを見て、すぐに彼女を桑原勝の前に押し出そうとした……
「違うわ……女友達に会いに来たの」青木岑は説明した。
そのとき、中島美玖から電話がかかってきた……
「着いた?」
「あ……着いたわ。何号室だっけ?」青木岑は急いで尋ねた。
「C」