「お見合いに失敗したから、いつものように祝杯を上げるべきだったわね……」
「今回は成功したの?」青木岑は少し驚いて彼女を見つめた。
「成功とは言えないわ。ただ、両親があの人のことをとても気に入ってるの。でも私、どうしても心が落ち着かなくて」そう言って、中島美玖はお酒を二杯注ぎ、一杯を青木岑に渡し、もう一杯を一気に飲み干した。
「ごほん……今度こっそり付き合うわ。主人が下にいるから、お酒を飲んでるのがバレたら殺されちゃうわ」青木岑は本当に密かに飲む勇気がなかった。前回お酒を飲んで警察署に行き、西尾聡雄に尋問され、生きた心地がしなかったからだ。
西尾様が怒る姿はやはり怖かった。愛してくれてはいるものの、悪い習慣は絶対に許してくれない。
「そう、じゃあ私一人で飲むわ……」中島美玖は自分でもう一杯注ぎ、再び一気に飲み干した。
まばたきひとつせず、まるで水でも飲むかのように……
こんなに豪快な女性を、青木岑も初めて見た……
「相手のことが好きじゃないの?」青木岑は探るように尋ねた。
「どう言えばいいかしら?彼は結婚相手として申し分のない人よ。30歳で、環境保護の仕事をしていて、若手CEOで、海外帰りの博士で、金融の天才で、ハンサムで、話し方も上品で、家族の背景もクリーンで、恋愛歴もないの」
「わぁ……そんな人でも好きになれないの?」中島美玖の話を聞いて、青木岑は思わずため息をついた。
今どき、いい男性はほとんど絶滅危惧種なのに、お見合いでこんな逸材に出会えるなんて、青木岑は彼女がとても幸運だと思った。
「そうなの。一見すると本当に素晴らしくて、私も結婚相手として適していると思うんだけど……でも……何かが足りない気がするの」
「感覚的なもの?」
「そんな感じかな……彼は典型的なさそり座で、怖いほど理性的なの……彼は自分が何を求めているかよく分かっていて、私のことを愛してないのも分かってる。ただ私が彼の妻として相応しいから、妻という肩書きを与えてくれるだけ……外から見れば才色兼備の理想的なカップルだけど、それは私たち二人がお互いを利用し合っているという外見的なラベルに過ぎないの……」
「そんな風に考えなくてもいいんじゃない?結婚してから愛が芽生えることだってあるでしょう?周りにも結婚してから愛が育った人たちはいるわ」