第168章:腹黒い女の手段(8)

「お会いできて光栄です、西尾社長」

「こんにちは」西尾聡雄は淡々と頷いて挨拶した。

その後、道中はほとんど会話もなく、中島美玖を中島家まで送り届けた。

「お二人はもうお帰りになって。また連絡を取り合いましょう」中島美玖は青木岑の頬をつまんで、それから振り返って家に入った。

「あの女性とはいつから友達なんだ?」

帰り道で西尾聡雄はゆっくりと尋ねた……

「えっと……そう長くないわ。坂口晴人の治療のために知り合ったの。彼女は有名な心理学博士よ」

「知っている」

「あなた、彼女を知ってるの?」青木岑は少し驚いた。

「直接の面識はないが、人物は知っている。彼女が近々婚約するのを知っているか?」西尾聡雄は突然話題を変えた。

「それまで知ってるの?」青木岑は信じられない様子で、自分の夫は千里眼でもあるのかしら?

「彼女が婚約する相手は、佐藤然の従兄だからな」

「えっ?」青木岑は今度は完全に混乱した。

「佐藤然の叔母の息子だ。環境保護の仕事をしている。頭の切れる男らしい。佐藤然が昨日、従兄が電撃婚約するらしく、相手はお嬢様だと愚痴っていたところだ」

「なんて偶然……なるほど」青木岑は納得した。

「中島美玖は、セレブ界では控えめな方で、スキャンダルもない……ただし、かなり変わった人物だ。彼女があなたと友達になれたということは、あなたの何かが彼女の気に入ったということだな」西尾聡雄は分析した。

青木岑は照れくさそうに笑って、「私が彼女に似ているって言われたの。性格が少し変わっているところとか。それに……私は常識にとらわれない方法を取るのが好きで、坂口晴人の病気は治療が難しかったけど、私は型破りな方法を使ったの。彼女も以前、坂口晴人に催眠療法を試みたけど失敗したみたい。たぶん、そういう理由じゃないかしら」

「ふむ」西尾聡雄は頷いて、それ以上は何も言わなかった。

家に帰ると、青木岑は連続して三回くしゃみをした……

西尾聡雄は心配そうにリビングの薄い毛布を彼女にかけた。

「急いで出かけすぎて、上着も着ていなかった。風邪を引いたかもしれないな」

「うん、寒かったわ」青木岑は毛布にくるまって、ソファーに座った。

西尾聡雄は黙って台所へ向かった……

数分後、生姜入りの黒糖湯を持ってきた。

「熱いうちに飲みなさい。体が温まるから」