「その写真について話し合いたいのですが」
「それは...申し訳ありませんが、奥様、あなたはこの業界の専門家ではないので、話し合っても意味がないのではないでしょうか?」平野監督はかなり几帳面な人物で、青木岑の目を全く信用していなかった。
「では、私の意見を聞いてみませんか?間違っていたら指摘してください。正しければ、提案させていただきます」
「そうですね...」平野監督は半信半疑でパソコンの前に座った。
青木岑も近寄り、一組の写真を指さしながら言った。「これらの写真をよく見たのですが、あなたも私と同じ感覚を持っているはずです。写真の撮り方は素晴らしく、光も角度も、モデルの表情や動きも完璧なのに、なぜか違和感があるんです。そうでしょう?」
「そうなんです...それが私がずっと悩んでいた理由なんです」
「この写真を見て、最初は私もあなたと同じように悩みましたが、すぐに気づきました。問題の本質は技術的なものではありません。技術に問題がないのなら、それは人の問題に違いありません」
「人の問題ですか?」平野監督は困惑した様子だった。
青木岑はうなずき、続けて言った。「松山雪乃は早くにデビューして、とても強い存在感を持つお姉さんタイプです。一方、坂口晴人は比較的遅くデビューして、アイドル路線で、今で言うイケメン系です。二人は年齢はそれほど変わらないのに、一緒に写真を撮ると、オーラが全く合わないんです」
「ああ...そう言われてみれば、確かにその通りですね」
青木岑に指摘されて、平野監督は写真を丁寧に見直した。
どの写真も衣装や動き、メイクは調和が取れているのに、オーラが確かに合っていなかった。
まるで不釣り合いな姉弟のような関係性...
「奥様、目から鱗が落ちました...でも...この問題をどう解決すればいいのでしょうか?人を変えるわけにもいきませんし...」
「いいえ、まさに人を変えるべきなんです」
「でも、GKには今、彼ら以上に知名度のある人はいませんし、どちらを降ろすにしても説明がつきませんよ」