第269章:あなたたち二人は同盟を組むべき(9)

「どう言えばいいの?子供に分かってもらえるの?お父さんを愛していなかった、お父さんに強姦されたって言えるの?母親として、そんなこと口に出せるはずがない。実は...坂口晴人が良い暮らしをしているのを見て、私も嬉しかった。彼のお父さんが亡くなったと聞いた時、晴人に会いに行きたかったけど、その時、桑原父さんが許してくれなくて、もし晴人に会いに行ったら、私の桑原勝を連れ去って売り飛ばすと脅されたの」

「最低な男ね...」青木岑は思わず罵り言葉を吐きそうになった。

「その時の私も弱かった。男なしじゃダメだと思い込んでいて...彼が出て行ってから、私一人で家計を支えて、やっと分かったの。私一人でも桑原勝を育てていけるって。もし彼が段々重病になっていなければ、本当に晴人に会いに行きたくなかった。私のことを憎んでいるのは分かっているから」

「晴人は...この数年の辛い経験で...深刻なうつ病になってしまったの。あなたには分からないかもしれないけど、これはとても深刻な心の病気で、自殺願望も出てくるの」

「自殺?」小西順子は信じられないという表情で青木岑を見つめた。

「大げさに言っているわけじゃないの。本当に深刻なの。そうでなければ、私もこんなに急いであなたを探しに来なかった...晴人の人生で一番気にしているのは、良い母親がいなかったこと、母親の温もりを感じられなかったこと...だから死にたいって言うの。死んだ方が楽になれるって」

「私が申し訳ないことをした...」小西順子は目を見開いて、深く後悔の念に駆られた。

「もういいわ。最初は本当にひどい母親だと思っていたけど、今は分かったわ。あなたにも事情があったのね...今はそれを気にしている場合じゃないわ。今一番大事なのは桑原勝の治療よ」

「でも...お金が払えないわ。腎臓移植だけでも四、五百万円かかると聞いたし、手術費を入れたら一千万円以上になる。そんなお金、私には出せない。貯金もないの」

小西順子は本当にお金がなく、青木岑に正直に打ち明けた...

「それは私が何とかするわ」

青木岑も彼女にお金がないことは分かっていたが、病院に無償で治療してもらうわけにもいかない。結局、病院は慈善事業ではないのだから。

実は青木基金のお金を使うこともできる。桑原勝の状況は条件に合っている。