彼女は24年間、こんな非現実的な海を見たことがなかった。
海水は底まで透き通り、様々な小魚が浅瀬で戯れ、まるで人を恐れないかのようだった。
空は信じられないほど青く、まるで画家の墨が誤ってこぼれたかのようだった……
白い雲は綿菓子のように、近くの上空に漂っていた……
このような光景は、実際に目にしなければ想像することさえ難しい。
太陽がもうすぐ沈もうとしていても、依然として救いようのないほど魅力的だった。
後ろの撮影チームとボディーガードも皆、スマホを取り出して写真を撮りSNSに投稿していた。
幸治も例外ではなく、スマホを取り出して連写し、青木岑に向かって叫んだ。「姉さん、動かないで、一枚撮るよ」
青木岑は振り返り、微笑んだ……
幸治はその一枚を撮ると、姉のこの写真があまりにも美しすぎることに気づいた……
「西尾社長、みんな疲れているでしょうから、一度各自の部屋で休んでから、夕食にしましょう」気さくな女性アシスタントが言った。
西尾聡雄はうなずき、青木岑の手を引いて最も豪華な水上コテージに入った。
広いベッドの上には、バラの花でハートが作られ、中央には白いタオルで折られた白鳥があった。
テーブルの上には水滴型の花瓶が置かれ、中には天香の百合が活けられていた。
要するに、この場所はロマンスと驚きに満ちていた。
「こういうの好き?」西尾聡雄は青木岑を軽く抱きながら尋ねた。
「言わないで……ここに来て気づいたけど、私たちの国のはまったく海じゃないわ。せいぜい濁った湖くらいね」
青木岑のこの皮肉に、西尾聡雄も思わず笑ってしまった……
「きっと疲れているだろう。先にシャワーを浴びて、少し休もう」
「うん」
青木岑はうなずき、バスルームに入って温かいお風呂に浸かった。
バスにはローズのエッセンシャルオイルが自動的に加えられ、サービスは完璧だった。
彼女がバスローブを着て出てきたとき、少し恥ずかしそうだった……
なぜなら、通常、お風呂上がりに二人きりになると、何かが起こるものだから。
青木岑は、西尾様がきっと我慢できずに彼女に飛びかかってくると思っていた……
しかし出てみると、彼女は呆然とした……
西尾様はとても疲れていたようで、ビーチパンツと白いTシャツに着替えてベッドで眠っていた。