第22章 気にかけ始めた！

「お兄さん、私の学校に一橋渓吾っていう子がいるの。学校の誰も彼と話さないし、嫌っているの。なぜだか分かる？」

……

「彼が学校に来たばかりの時、学年一位を取ったんだけど、後で告発されて、カンニングだったことが分かったの。でも学校の先生たちは彼を可哀想に思って、特別に退学処分にはしなかったの。

一位の座を奪われた優等生の曽我時助が彼のことを嫌いになって、時助のファンたちと一緒に彼を排斥しているの。」

……

「それに、彼が学校に来たばかりの時、不良が人をいじめているのを見かけて、正義感から助けに入ったの。

でも実は、その人は不良に一千万円の借金があって、不良はその取り立てをしていたの。

彼は不良の怒りを買って、不良が『一橋渓吾と友達になる奴は俺の敵だ』って言い触らしたの。

不良のファンも多くて、彼は学校で透明人間みたいになって、みんなから無視されているの。可哀想じゃない？」

……

「お兄さん、今日食堂で彼を見かけたの。本当に貧乏なの。ご飯を食べる時も、食堂で白米だけ買って、外で百円で売ってる漬物を持ってきて食べてたの。」

……

「お兄さん、私、彼を助けたいの。ご飯を奢りたいけど、プライドが高そうだから受け入れてくれないかも。どうしたらいいと思う？」

……

「お兄さん、知らないでしょう？私の隣の席の子がバカで、ずっとうるさくて、ハエみたいに追い払っても追い払っても来るの。」

……

「お兄さん、今日学校でいじめられたの。私のご飯にジュースをかけられて、それを無理やり食べさせられそうになったの。」

……

「私そんなに甘くないわよ。そのままお盆ごと彼女の顔にかけてやったの。見てたらよかったのに、あの子の顔がすっごく面白かった。怒り死にしそうだったわ！」

……

水野日幸は、最初にボスが彼女に言った言葉のおかげで、とても嬉しくなって、話すのも楽しくなった。

時間が経つのは早いもので、いつの間にか日が暮れてきた。

「日幸、ご飯よ」出雲絹代が呼んだ。

水野日幸は名残惜しそうに手を振った。「お兄さん、じゃあ行くね。今日は食事の後に宿題があるから、お話できないの。ちゃんとご飯食べてね、またね。」

彼は冷たそうに見えて、ずっと本を読んでいたけれど。

でも彼女は知っていた。彼女の話す言葉を、全部聞いていたことを。