入り口の人も入ってきて、会社から一緒に来た人たちが全員揃った。
「水野社長、早いですね!」松本新祐は女優の水野若実のマネージャーで、笑顔で挨拶した。
「水野脚本家、お待たせしましたね」主演の木村有希のマネージャーである中村広山が立ち上がって、彼女の椅子を引いて座るよう促した。
残りの人々は、源那津以外は皆、水野日幸に丁寧に挨拶をした。
高橋夢は目の前の光景を見て、呆然とした。
あの若い女性が主演女優でないのなら、こんなに美しい必要はなかった。間違った相手に挑発してしまった。
もう終わりだ。彼女の人生は終わってしまったのかもしれない。若社長で脚本家の方を怒らせてしまった!
高橋夢のマネージャーの山田早苗が彼女を呼び、水野日幸を紹介した。「夢ちゃん、こちらは我が社の水野社長で、『笑江山』の脚本家よ」
高橋夢は唾を飲み込んで、水野日幸を見た。
水野日幸の目は冷ややかで、彼女を一瞥した。
高橋夢は震えた。まあ、若いのに、なんて怖い人なんだろう。やっぱり大物になれる人は違うわ。
源那津は彼女を見て笑いながら、小声で尋ねた。「水野社長、何か機嫌が悪そうですね。誰かに何かされたんですか?」
水野日幸はどうでもいいように笑って、威厳を示すべき時とばかりに、その場の全員が聞こえる程度の声で言った。「目の前にいる物分かりの悪い者に会っただけよ。実を言えば、怒る価値もないわ」
高橋夢は震えながら、自分の名前を出さなかったことに安堵した。「私たちの会社の水野若社長、脚本家様は美人で、素晴らしい方だと聞いていました。天才だとも。本当にその通りですね」
水野日幸は「そこまで褒めていただかなくても」と言った。
高橋夢は笑いながら謝った。「これは褒め言葉ではなく、水野社長が本当にそれだけ素晴らしい方だということです」
水野日幸は冷ややかに笑みを浮かべた。
源那津だけでなく、その場にいる全員が察しの良い人たちで、高橋夢と水野若社長の間の空気がおかしいことに気付いていた。
その場にいる人々の中には、水野日幸を知っている人もいれば、知らない人もいた。
お互いに紹介を済ませ、水野日幸が少し話をした後、源那津は料理を運ぶよう指示した。