曽我逸希:「安心しろ。あれだけ大掛かりな撮影をしても、放送は下半期になるだろう。ドラマの審査基準なんて、一瞬で変わるものだからな」
曽我時助は目を輝かせた:「お父さん、つまり審査を通らないってこと?」
ドラマが人気になって、自分が台本を断ったことを後悔するのが一番怖かった。
曽我逸希は彼に目配せをした:「これは上層部の機密情報だ。外では喋るなよ。下半期は時代劇と生まれ変わりものが規制されるんだ」
曽我時助は目に陰険な喜びを浮かべた:「お父さん、安心して。絶対に外では喋りませんから」
自分が断ったドラマは、自分が捨てたゴミ同然だ。他人には撮らせない。撮っても人気は出させない。
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『笑江山』の主演男女と第二主演の男女は、全員コスモスエンタテインメントの新人だった。
源那津は個室を予約し、これから『笑江山』の撮影に入る俳優たちを集めて食事会を開き、ついでに社長家の水野若社長にも会わせることにした。
水野日幸は暇だったので早めに来ており、個室に着いた時は彼女一人だけだった。
しばらくすると、個室のドアが開き、スタイル抜群で美貌の際立つ女性が入ってきて、不機嫌そうに水野日幸を横目で見た:「あなたが『笑江山』のヒロイン?」
水野日幸は彼女を一瞥し、淡々と言った:「あなたが第二ヒロインね」
高橋夢は、会社の新人女優で、枕営業を拒否したため、三年間も三流タレントのままだった。
記憶では、三十歳近くになってようやくチャンスを掴み、一気にブレイクした遅咲きの女優だった。
演技力があり、可能性も高い。このドラマでは素のままで演じられる。第二ヒロインの性格とぴったり合う、あざとい感じが。
「私が第二ヒロインだってどうしたの?気をつけなさいよ。私はずっと第二ヒロインのままじゃないわ」高橋夢は彼女を馬鹿にされたと思い込み、彼女の胸元に視線を向けた:「お嬢ちゃん、あなたもたいしたことないじゃない。うちの会社の脚本家の目は相当悪いみたいね」
「脚本家があなたを第二ヒロインに選んだのは間違いだと思ってるの?」水野日幸は冷ややかな目つきで:「あなたを外すべきだと思ってるってこと?」
高橋夢は嘲笑いながら、敵意むき出しで:「私を選んだのは脚本家よ。あなたじゃないでしょ。文句があるなら脚本家に言ってみなさいよ!」