第38章 とても美味しい幸せ

水野春智は娘の言葉を聞いて、未完成のマンションを賠償として受け取って以来、本当に娘の福に恵まれ、運気が上がり、何をしても順調だった。

一週間前、銀行が承認を渋っていたローンが通り、資金繰りの問題が解決した。

昨日は長らく停滞していた二つの大きな商談がまとまった。

今日はさらに郊外の土地を安値で競り落とすことができた。

嬉しい出来事が重なり気分も上々で、夜に帰宅する際、団地の入り口で妻と娘の大好物の焼き芋を買い、リビングの前で呼びかけた。「お母さん、日幸」

水野日幸は家に帰ってからというもの、リビングのソファで宿題や仕事をするのが好きで、顔を上げると目を輝かせた。「ママ、早く来て、パパが焼き芋買ってきたよ!」

水野春智は娘の向かいに座り、焼き芋をテーブルに置いた。

水野日幸は手に取ったものの、熱くて手を引っ込め、耳を触りながら「水野、最近すごく機嫌いいね!」

「今日パパはまた郊外の二区画の土地を手に入れたんだ」水野春智は焼き芋の皮を剥きながら、嬉しそうに言った。「パパが大金を稼いで、お前とママにバッグやジュエリー、化粧品を買ってあげるからね」

「水野、頑張って!」水野日幸は彼の手の中の焼き芋を見て、かぶりつこうと近づいた。

水野春智は彼女の頭を軽く叩いた。「狼みたいだな、これはママのだよ」

水野日幸はそれでも一口かじった。「やっぱりパパが剥いた方が美味しい」

出雲絹代は苦笑いしながら「水野、いいじゃない、食べさせてあげなさいよ」

水野春智は守るように「ダメだ、これは絹代のだ。後で剥いてやるから」

水野日幸は告げ口した。「ママ、見て、えこひいきだよ」

水野春智「ママに先に食べさせるのが気に入らないの?」

水野日幸は鼻を鳴らし、不満げな様子。

水野春智は焼き芋を妻に食べさせながら、娘を横目で見た。「文句があるなら我慢しろ」

「もういいよ、二人とも。独身の私の前で恋愛アピールするのやめて」水野日幸は目を覆い、二人を非難した。

水野春智は笑った。「将来ね、お前もパパみたいに人を大切にする相手を見つけるんだよ」

その言葉が終わるか終わらないかのうちに、愛娘は二つの焼き芋を持って飛ぶように出て行った。

出雲絹代は笑った。「お隣さんが帰ってきたのね。日幸ったら、あの人と仲良くなったみたいよ」