長谷川深は一口食べてみると、甘くてもちもちした美味しさが口の中に広がり、まるで少女の話し声のように、心まで甘くなった。
少女は食べながら話すのが大好きで、口の中がいっぱいになって、まるでハムスターのように、可愛らしい頬がぷくぷくと膨らんでいた。
長谷川深は静かに彼女の話を聞いていた。彼は彼女の話を聞くのが好きで、いくら聞いても飽きることがなかった。
水野日幸はドラマの撮影の件について彼に話し、ため息をつきながら心配事を語った。
ドラマを撮影しても誰も買ってくれなかったらどうしよう?
売れても、放送した時の視聴率が悪かったらどうしよう?
投資家に大損させてしまったらどうしよう?
長谷川深:「そんなことはない」
水野日幸はさつまいもを噛みながら、もぐもぐと:「本当?」
長谷川深は頷いた:「本当だ」
「お兄さんの言うことは絶対に正しいもの」水野日幸は明るく笑って、さつまいもを持って乾杯のジェスチャーをした:「頑張ろう!」
長谷川深はさつまいもを持ったまま一瞬動きを止め、少女の輝く期待に満ちた瞳を見つめ、彼女の真似をした:「頑張ろう!」
水野日幸には話したいことがたくさんあった。会社の新人タレントのこと、編集者のこと、監督のこと、一橋渓吾を契約したいということも。
「お兄さん、前に話した学校全体からいじめられている生徒のことなんだけど、彼にはすごく可能性があると思うの。生まれながらにして芸能界向きなの」水野日幸は写真を取り出して彼に見せた。
学校の掲示板で見つけた写真で、一橋渓吾のルックスは第四中学校全体で、曽我時助や辻緒羽を圧倒して、間違いなく一番だった。匿名掲示板では彼の写真に見惚れる人が少なくなかった。
長谷川深は低く返事をし、ちらりと一目見ただけで、その瞳がほんの少し暗くなった。
「お兄さん、明日ダンスコンテストがあって、早起きして準備しなきゃいけないの。朝の五時に最後のリハーサルがあるの」水野日幸は手を叩いて、壁に寄りかかりながら続けた:「朝、挨拶できないから」
「わかった」長谷川深は頷いた:「早く休め」
「お兄さん、まだ言ってないことがあるでしょ!」水野日幸はしつこく残って、期待に満ちた目で彼を見つめた。
長谷川深:「コンテスト、うまくいくように」
水野日幸は首を振った:「違う、それじゃない」