第46章 彼女は何様のつもり

少女は自分のことを知らない人がいるとは思わなかった。「私は関口月です。松原白羽先生の直弟子です!」

水野日幸は「先生のご厚意に感謝します。ですが、弟子入りはお断りします」と答えた。

他の人がこう言ったら、関口月はきっと見栄を張っていると思うだろう。でも、目の前の少女が本気で言っているのは分かっていた。「私の先生は日本一のダンスアーティストですよ。どれだけ多くの人が先生の弟子になりたがっているか分かりますか?」

水野日幸は礼儀正しく「先生にお伝えください。時間があれば必ずご挨拶に伺います」と言った。

彼女はもちろん知っていた。松原白羽先生は日本一のダンスアーティストであり、日本の誇りであり、日本の貴重な宝だということを。

「どうしてですか?理由くらい教えてください。先生に報告しなければならないので」関口月は彼女を追いかけた。

「ダンス界で活動するつもりはないんです」水野日幸は当然のように言った。

彼女は忙しかった。やるべきことが山ほどあった。仕事も復讐も彼女の全てではなく、愛する人の健康と幸せこそが彼女の追求するものだった。

「分かりました」関口月は彼女の態度が固いのを見て、それ以上は強要しなかったが、とても残念に思った。

自分には才能が足りないことは分かっていた。でも、勤勉で努力家だった。先生について一番長く、唯一最後まで続けた弟子だった。

しかし、自分にはまだ先生の技を受け継ぐ資格がないことも分かっていた。

水野日幸ならできる。彼女には自分に欠けている才能と霊気が十分にあった。

関口月もこの決勝の出場者で、松原白羽の弟子として、国家二級ダンサーとして、専用の控室があった。

「私の控室で休んでいきませんか?」関口月は誘った。

「結構です。ありがとう」水野日幸は丁寧に断り、微笑んだ。

関口月は少女の後ろ姿を見つめた。凛として孤高な姿は、荒野に一輪咲く野バラのようだった。自由に生き、溢れんばかりの生命力を放っていた。

関口月が水野日幸を見つけたこと、松原白羽が水野日幸を弟子にしようとしたことは、すぐに広まった。水野日幸が断ったことを知り、惜しむ人もいれば、傲慢で分別がないと思う人もいた。

「あぁっ!」曽我若菜は鋭い怒りの叫び声を上げ、怒りで顔を歪め、目に毒々しい色を宿し、目の前のテーブルをひっくり返した。「この賤人!」