第50章 不純な目的

辻緒羽は突然向きを変え、水野日幸の方へ歩み寄り、優雅に紳士的に軽く腰を曲げて「おめでとう」と言った。

曽我若菜の手は宙に浮いたまま固まり、辻緒羽が水野日幸に花を渡すのを見て、胸が爆発しそうになった!

あの賤人!

水野日幸のあの賤人!

あの女が辻緒羽を誘惑している!

辻緒羽が好きなのは私なのに、私が彼を拒否したからって、水野日幸なんかに渡すはずがない!

川村染も辻緒羽が水野日幸に花を贈るとは思わなかった。娘の気まずそうな様子を見て、客席の曽我時助の方を見た。

曽我時助も花を持っておらず、舞台上の光景を毒々しい目つきで見つめ、辻緒羽と水野日幸を殺してやりたいとばかりの表情だった。

その時。

客席から突然もう一人が歩み寄ってきた。すべてのスポットライトが一斉に彼に当てられた。