水野日幸はまだ何も言わなかった。
水野春智は不満そうに言った。「日幸はまだ17歳だよ。恋愛なんて言ってる場合じゃない。今は勉強に専念すべきだ。」
「そうよ、お母さん。パパの言う通りだと思う。」水野日幸は笑いながら母の胸に飛び込んだ。「今の私は外の事なんて気にせず、ただ勉強に励むだけ。大学入試に向けて頑張るの。」
出雲絹代は娘を抱きしめながら「うん、分かったわ。うちの娘は本当に良い子ね。」
水野日幸は顔を上げ、輝く瞳で母を見つめた。「ママ、ご褒美は?」
出雲絹代「さっき火鍋を食べたでしょう?」
水野日幸は口を尖らせた。「ふん、全然私のこと甘やかしてくれない。ココナッツチキンが食べたい!」
出雲絹代は笑った。「いいわよ、ココナッツチキンを作ってあげる。毎日作ってあげようか?」
水野日幸は母の胸の中で頭をすりすりさせた。「それなら許してあげる!」
出雲絹代は娘を抱きしめながら、目にも心にも幸せが溢れていた。曽我家の者たちの影響を受けていないことを確認し、安心した。
夫と一緒に生配信を見ていた時、川村染と曽我若菜、そして曽我時助を見かけた時は、とても緊張した。娘のパフォーマンスが心配というよりも、娘が傷つき悲しむことを心配していた。
試合中はずっと気が気ではなく、娘にどう話しかけ、どう聞けばいいか相談していた。しかし、娘は全く影響を受けていなかった。
自分の娘のことは自分が一番よく分かっている。もし心に引っかかることがあれば、こんなに楽しそうにはしていないはず。感情は顔に出るものだから。
水野と相談した結果、この件については娘の前では触れないことにした。
水野日幸が出てきたのは既に1時過ぎで、火鍋を食べ終わったのは4時過ぎ、家に着いたのは午後5時だった。
天気はますます曇り、途中で雨は霰に変わり、車の屋根をサラサラと打ち付けていた。
家に近づく頃には、霰は雪に変わっていた。
家の玄関に着く頃には、小雪は鵞毛のような大雪になっていた。
水野日幸は車を降りると、中庭に向かって走り出し、まだ近づく前から興奮して叫んだ。「雪が降ってる、お兄ちゃん、雪が降ってるよ!」
中庭は静かで、彼女の声の反響だけが聞こえた。
雪はますます激しく降り、鵞毛のように渦を巻いて落ちてきた。
彼女は数歩で塀の上に登り、目をやると車椅子に座る男性が見えた。