第80章 本当に水野日幸

彼女は今、雰囲気美人そのもので、その気品は顔立ちさえも忘れさせるほど艶やかで、彼女の全体的なレベルを引き上げていた。

田中楠は目を見張ったまま、美しい、本当に美しいと思った。同じ人なのに、もう別人のようだった。

彼は工藤沙織のデビューから女優賞受賞、そしてその後20年間、彼女を映画界で揺るぎない大女優の地位に何度も導いてきたが、こんなにも息を呑むほど美しく、思わず頭を下げたくなるような姿は初めて見た。

中森茜さんは本当に素晴らしい。まさに名師の教えを受けた者は違うものだ。彼女の師匠の江川歌見がスタイリングしても、今ほど完璧にはならなかったかもしれない。

工藤沙織は非常に満足し、水野日幸を見る目が柔らかく、心からの賞賛を含んでいた。「中森先生、帰らないで。レッドカーペットが終わったら、お食事に招待したいわ。」

「ありがとうございます、工藤先生」水野日幸は目の前の女性を見て尋ねた。「観客席に行かせていただけますか?」

田中楠は心の中で喜び、やっと手強い女優を説得できたことに感謝しながら急いで答えた。「もちろんです。後でご案内いたします。」

水野日幸は実際この映画にそれほど興味はなく、ただ川村染が血を吐きそうになりながら上品な態度を保とうとする醜態を直接見たかっただけだった。

観客席にはすでに多くの人が座っており、前方の8列のVIP席にはまだ空席が残っていた。

VIP席は主催者が招待客のために用意したもので、芸能人や各界の著名人が座り、価値とステータスに応じて座席が配置されていた。

一般観客席の最も良い位置は9列目で、芸能人席に近く、非常に人気があり、コネがなければ手に入れることはできなかった。

曽我若菜と彼女の友人たちは9列目に座っていた。

「若菜、すごいわね。私たちがここに座れるのは、あなたのおかげよ。」

「わー、前の座席表を見たら田辺一暁さんもいるの!最近の推しなの。後でサインをもらいに行きたい!」

「若菜、あなたは私のラッキースター!大好き!」

曽我若菜は褒め言葉を楽しみながら、微笑んで優しく言った。「大したことないわ。ちょっと母に言っただけで、席を用意してくれたの。」

「お母様は本当に若菜さんを大切にしているのね。」