水野日幸は彼女たちが俳優、脚本家、監督を次々と褒めるのを聞いて、彼女たちを一瞥すると、急に好感が持てるようになった。
「でも、なぜ第一話の視聴率がこんなに低いの?0.5%だなんて納得できない。メイク、衣装、セット、俳優陣、全部トップクラスなのに。見ない人たちは目が節穴なのよ」
「まだ第一話よ。焦ることないでしょ。今、各掲示板やSNS、それに私たちの周りでも、自然と宣伝されているじゃない。第二話の視聴率は絶対に急上昇すると断言できるわ」
「そう!私の木村有希お兄様、頑張って!」
みんなが視聴率の話になると、不満を漏らし始め、周りの人全員に熱心に勧めることを決意した。
曽我若菜はドラマを褒める声を聞いて、胸が痛くなった。曽我時助が入ってくるのを見て、急いで田中澪子の袖を引っ張った。「澪子、もう話すのはやめましょう」
三のお兄がこれを聞いたら気分を害するに違いない。結局、このドラマの脚本は最初に彼に渡されたもので、主演も彼の予定だったのに、断ってしまったのだから。
曽我時助は顔を曇らせ、教室内の人々を冷たく見回して、怒って踵を返した。
なんだよ、今日はどこに行っても、このくだらないドラマの話ばかり聞こえてくる!
明らかに失敗作なのに、みんな目が見えないのか?なぜこんな粗製乱造の吐き気がする作品を好むんだ!
「三のお兄」曽我若菜は心配そうに呼びかけ、追いかけていった。
田中澪子たちは人が去ったのを見て、また小声で話し始めた。曽我時助がドラマを断ったのは残念だと。作品の質が高すぎて、展開も毎分見どころがあり、このペースを維持できれば、ここ数年で稀に見る高品質なヒット作間違いなしだと。
水野日幸はとても嬉しく、彼女たちがますます好ましく思えた。自分のドラマと、俳優陣、監督を褒めてくれる人は、一時的であっても同じ陣営の仲間なのだから。
「『笑江山』見た?」大豆田秋白は入ってくるなり、水野日幸の前に直行した。
水野日幸は問題を解きながら、彼を見ようともしなかった。
大豆田秋白は彼女の隣に座り、狐のような目を細めて笑いながら、独り言のように言った。「見てないなら、一緒に見よう」
そう言って、スマートフォンを二人の間に置き、イヤホンを外して、スピーカーで再生した。
水野日幸は彼を冷たく一瞥し、一言も話したくなかった。