第128章 先生としか呼べない

水野日幸は、堂々と家に入ってきた人を見て、額に黒い線が浮かんだ:一体誰の家だと思ってるの!

まずい、彼女は触れてはいけない人を怒らせてしまったようだ。

出雲絹代は玄関で誰かが話しているのを聞いて、急いで出迎えに行った。目の前には極めて美しいハーフの美女が立っていた。彼女が何か言おうとする前に。

「お姉さん、あなたが日幸のお母さんですね。私は彼女の師匠の江川歌見です」江川歌見は直接大きな一手を打って、華やかに笑った。「事前にご連絡せずに突然お邪魔して、申し訳ありません」

「いいえ、どうぞ」出雲絹代は目の前の美人を見て、そして苦い表情をした娘を見て、目配せをした。どういうことなの?どんな師匠?

水野日幸は肩をすくめ、ため息をついた:実を言うと、私もまだ状況が飲み込めていないんです!

彼女は人が必死に弟子入りを願う場面は見たことがあったが、誰かが無理やり弟子を取ろうとするのは初めて見た。

「お姉さん、これは日幸の賞杯です。私が代わりに受け取ってきました」江川歌見は上品な箱を開け、中には美しい賞杯が入っていた。今回のデザインコンテストの金賞トロフィーだ。

「ありがとうございます」出雲絹代は優しく微笑んで、江川歌見だと気づいた後、嬉しさのあまり落ち着かない様子で「日幸のこの子ったら、何も言ってくれなくて、何も準備できていなくて」

「何も準備する必要はありませんよ。みんな家族同然ですから」江川歌見は人なつっこく、お姉さんお姉さんと呼び、とても親しげだった。

彼女はお姉さんと呼ぶだけでなく、水野日幸にも気軽に指示を出していた。

水野日幸はジュースを二杯持ってきて、憂いを帯びた表情で新しい師匠を見た。遠慮がなさすぎるんじゃない?知らない人が見たら、ここが彼女の家だと思うわ!

出雲絹代は興奮のあまり何を言っていいかわからなかった:「うちの日幸なんかが、これからは江川先生にご迷惑をおかけすることになります」

なるほど、さっき最初に見た時に見覚えがあると思ったんだ。名前も聞き覚えがある。目の前の人物は、彼女が最も好きな『歩道橋』雑誌の元編集長、江川歌見だった。

娘はすごいことになった。日本一のファッションスタイリストの江川歌見先生を師匠に持つことになったのだ。どうお礼を言えばいいのかわからない。