曽我時助の顔は怒りで真っ黒になり、辻緒羽を殺してやりたいほどだった。彼は意図的に自分を刺激し、目の前で『笑江山』を何度も何度も再生していた。
水野日幸は笑いを抑えきれず、思わず辻緒羽に向かって親指を立てた。
辻緒羽は彼女に向かって眉を上げ、得意げに笑った。
水野日幸はこの日、とても機嫌が良かった。曽我家の者が不機嫌なことが、彼女にとって最高の喜びだったから。
大豆田秋白と辻緒羽の二人は、どちらがより意地悪かを競い合うかのように、曽我家の兄弟、特に曽我時助を内心傷つけていた。
午後最後のディベートが始まる前に、下校のチャイムが鳴った。
水野日幸は考えに考え、少し迷った後で決心し、携帯を取り出して兄に短信を送った。
【お兄ちゃん、私たちまだディベートがあるから、帰りが遅くなるわ。待たないでね。】