第140章 「錦雲」設立

江川歌見と出雲絹代は、この一週間ずっとパーソナルブランド設立の件で忙しく、ようやく今日、会社の場所を決定した。

出雲絹代は、会社に自分の名前を使うべきではないと常々思っていた。彼女はあまり手伝っていないし、金賞は娘が獲得したものだし、ブランド登録の件も全て江川歌見が手伝ってくれているのだから。

「お姉さま、もう悩まないで。あなた以上に相応しい人はいないわ。『錦雲』にしましょう。錦繍の前程、雲程万里、素晴らしい意味じゃないですか」江川歌見はそう決定を下した。

出雲絹代が何か言おうとすると。

「ママ、これが一番いいわ」水野日幸は彼女の言葉を遮った。「ママは会社のチーフデザイナーなんだから、当然ママの名前を使うべきよ」

出雲絹代は二人を見て、説得は無理だと悟り、仕方なく頷くしかなかった。どちらにしても、誰の名前を使おうと、最終的には娘のものになるのだから、どうでもよかった。

「じゃあ決まりね。明日にでも登録に行くわ」江川歌見は笑顔で言った。

「ありがとう。この数日間、本当に申し訳なかったわ」出雲絹代は彼女への感謝の言葉が見つからなかった。忙しい中、全て彼女がやってくれて、娘は本当に良い先生を見つけたと思った。

ファッション界での江川歌見の人脈と地位は誰にも及ばず、どんなことでも簡単に解決できた。会社の場所を借りることから、従業員の採用、正式設立まで、一週間もかからなかった。

一週間後、「錦雲」が設立された。

江川歌見は水野日幸の要望に応じて、「錦雲」の真の所有者を一時的に公表せず、対外的には弟子の中森茜が設立した高級ファッションブランドということにし、表立っての全ての事は彼女が一手に引き受けた。

もちろん、最も重要なのはブランド設立発表会だった。

水野日幸は以前描いた作品を全て江川歌見に渡し、特別な技術を要する一部の作品を除いて、残りは全て一週間以内に製品化され、小規模なファッションショーを開催するのに十分な数量が揃った。

江川歌見は人脈が広く、多くの芸能人が彼女と親しくなりたがっていたため、発表会への招待を受けることはもちろん、招待状をもらえなかった人々も何とかして招待状を手に入れようと躍起になっていた。

水野日幸は人前に姿を現すつもりはなく、当面は出雲絹代にも登場してほしくなかった。