第152章 妹を探して

水野日幸は藤田清輝の応援ボードを手に持ったまま、彼が出てくるのを見て、会場のファンと一緒に興奮して叫んだ。「光輝兄、光輝兄！」

川村染は眉をひそめ、心の中でだいたい察していた。この生意気な娘は藤田清輝のファンで、家計を空っぽにしてでも会場の一番いい席を手に入れたのだろう。

彼女は知っていた。多くのファン、特に若い女の子たちは、アイドルと恋愛できると夢見て、どこへでも追いかけ、空港で出迎え、ライブに行き、ホテルまでついて行く。

分をわきまえない子ね。お金を使って目立つ席に座ったからって、藤田清輝が彼女を一目見てくれると思っているの？鏡を見て自分の姿を確認したらどう？

川村染と藤田清輝のインタビューは、二人が同じステージに立つ時間はたった十数分だった。

このインタビューは、川村染が自分のコネと手段を使って人に頼んで手に入れたもので、目的は藤田清輝と関係を築き、藤田家という大きな船に乗り込むことだった。

願い通り、一昨日テレビ局の幹部が食事会を設定し、彼女は若菜を連れて行った。藤田さんの若菜への印象は良く、彼女はとても満足していた。

次は藤田さんを自宅での食事に招待する予定だった。彼は日本にも慣れていないので、若菜にガイド役を申し出て、帝都や日本を案内させ、自然な形で感情を育んでいけばいい。

インタビューの間、川村染は水野日幸の存在に心乱され、彼女が何を言っても、あの生意気な娘が笑い、皮肉っているように感じた。

藤田清輝は水野日幸が来たことで、目元も眉も喜びに満ちていて、観客席を見るたびに、特に優しい眼差しを向けていた。

「光輝兄が私を見てる！」

「すごい、光輝兄の眼差しが優しすぎる。」

「光輝兄は明らかに私を見てるの、この人どうしてこんなに優しいの、死んじゃう。」

会場に来たファンたちは興奮していた。高額なチケットを買って来たけど、アイドルの神々しい顔を見られて、そんな優しく愛情のこもった眼差しに殺られて、損じゃない！

「違うよ。」後ろの席の女性がCポジションの水野日幸を指さして：「私には光輝兄があの子を見てるように思えるんだけど。」

光輝兄は確かに優しいよね、会ったことある人は皆知ってる。でも今までは距離感のある優しさだった。