水野日幸が飴を抱いて家に帰ろうとした時。
長谷川深は少女を見つめ、呼び止めて注意した。「ずるがき、私の絵だよ。」
「ずるいのはあなたの方です。」水野日幸は振り返り、怒って彼を睨みつけ、絵を投げるふりをして言った。「忘れてただけです。」
長谷川深は、頬を赤らめ、頬を膨らませた少女の姿を見つめていた。まるでクルミを盗み食いするリスのようで、可愛らしさに心が溶けそうだった。特に強調して言った。「それは私のものだ。」
水野日幸は結局投げずに、大人しくバスケットに入れて置いた。「はい、はい、あなたのですよ!」
長谷川深は低く笑い声を上げ、車椅子を転がして近づき、宝物のように絵を手に取って見つめた。少女の独り言を聞きながら、優しく注意した。「降りる時は気をつけて、飴を落とさないようにね。」