第184章 飴と名付けて

水野日幸は目を大きく見開いて喜んだ。「お兄さん、それどこから来たの?」

小さな子は彼のコートの中に隠れていて、小さな拳ほどの頭を覗かせていた。大きな瞳は潤んでいて、とても愛らしかった。

「拾ってきたんだ」長谷川深は少女を見て笑った。「帰り道で、この子に当たり屋をされたんだ」

水野日幸の心は柔らかくなり、急いで言った。「こっちに持ってきて、抱かせて」

今すぐにでも塀から飛び降りて、あの毛玉のような小さな生き物を抱きしめたかった。

葛生が近づいて子猫を抱こうとしたが、見た目は可愛らしいのに意外と凶暴で、彼に向かって威嚇し、全身の毛を逆立てた。

水野日幸は焦った。「葛生、怖がらせないで!」

葛生はさっと手を引っ込め、とても不満そうに小声で呟いた。「怖がらせてるのはそっちだよ」

こんな小さな生き物なのに、自分になつかない。誰が車を止めて助けてあげたと思ってるんだ。恩知らずな奴め。

長谷川深は葛生に下がるよう合図を送り、優しく子猫の頭を撫でて、驚いた様子を落ち着かせた。子猫の逆立った毛はすぐに収まった。

水野日幸は心配そうに言った。「私のことも嫌いかな?」

「大丈夫」長谷川深は子猫を抱き出し、その毛深い小さな頭を軽く叩いて、水野日幸を指差した。「これからはこの人がお前の飼い主だ。わかったか?」

子猫が完全に這い出してきて、水野日幸はようやく気づいた。子猫の前足は包帯でしっかりと巻かれていて、怪我をしていたのだ。

長谷川深は説明した。「見つけた時、前足が骨折していた。医者によると、まだ小さいから手術後すぐに回復できるそうだ」

水野日幸は心配そうに子猫を見つめた。

子猫はそれを感じ取ったかのように、潤んだ大きな瞳で彼女を見つめ、温かく甘い声で鳴いた。

水野日幸は子猫に微笑みかけた。「私についてくる?」

長谷川深は子猫を見ながら言った。「猫を飼ったことがないから、私と一緒だと苦労するかもしれないぞ。文句は言うなよ」

子猫は彼を見て、それから水野日幸を見て、最後に水野日幸に視線を固定した。大きな瞳は柔らかく愛らしかった。

長谷川深が籠に入れた時も、とても大人しかった。

水野日幸が持ち上げた時も大人しく、恐る恐る撫でてみた。