第186話 感情をコントロール

工藤沙織という人は、彼女より一歳年下だけで、二人は同じ年にデビューした。彼女のことを知らないはずがない。明らかに彼女より老けて見えた人なのに、最近は逆に若く見えるようになった。

加工していない写真やビデオでもはっきりと分かる。肌の状態が良くなり、引き締まって、コラーゲンまで戻ってきたような感じだ。以前の注射をしていた時のような、筋肉の走り方が不自然で硬いという感じではなくなっていた。

工藤沙織はここ数年、容姿のために美容整形に大金をつぎ込んできた。しかし、いくらお金をかけても老化を遅らせることしかできず、若さを買い戻すことはできないはずなのに、最近は目に見えて若返っているのだ。

川村鶴喜がドアを開けて入り、割れた鏡を見て、眉間を揉みながら諦めたように言った。「染、外にいる時は感情をコントロールするように。」

川村染が振り向き、目の奥に暗い色が浮かんでいた。「工藤沙織が最近何をしたのか、分かった?」

工藤沙織はまるで一気に最高の容姿に戻ったかのようだ。きっと美容院や医師を変えたに違いない。彼女の状態が良くなった秘密を絶対に手に入れなければ。

「全て調べましたが、彼女のスキンケアやボディケアは以前と全く変わっていません。この二週間は美容院のコースにも行っていないようです。」川村鶴喜は芸能界での容姿の重要性、特に女優にとってのそれをよく理解していた。

年齢に関係なく、誰もが最も気にするのは自分の美しさで、徹底的にケアを行う。誰もが肌のケアに大金を使い、容姿を保つためには手段を選ばない。

「そんなはずない。」川村染は信じられない様子で言った。「何もしていないはずがない。もう一度調べて。」

心の持ちようで若く見えることはあっても、それは状態が良く見えるだけで、肌まで若返るわけではない。工藤沙織はきっと誰も知らない手術をしたに違いない。

「もう一度しっかり調査させます。」川村鶴喜は言い、続けて「工藤沙織は最近、江川歌見と親密になっていて、江川歌見も最近肌の調子が良く、輝いているように見えます。」

「そう?」川村染は冷笑を浮かべながら命じた。「じゃあ二人のことをよく調べて。この世に秘密なんてないはずだわ。」

美容ケアに関しては、芸能界では秘密なんてないものだ。工藤沙織と江川歌見が同じ整形医を共有しているなら、必ず分かるはずだ。

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