水野日幸は彼女を見つめて尋ねた。「なぜトイレに行ったの?」
安美は眉をわずかに寄せ、唇を動かしかけたが、何を言えばいいのか分からないようだった。
「説明しなくていい」水野日幸は分かった。彼女のためではなく、黒田夜寒のためだったのだ。
救おうとしたのも彼女ではなく、黒田夜寒だった。少し寂しい気持ちはあったが、彼女への罪悪感は随分と減った。
「ゆっくり休んで」水野日幸は彼女に何を言えばいいのか分からなかった。彼女の過去や、黒田夜寒との関係について、正直あまり関心がなかった。
安美は彼女が立ち去ろうとするのを見て呼び止め、見つめながら言った。「ごめんなさい」
水野日幸は不思議そうに振り返って彼女を見た。「ゆっくり治療に専念して。あなたは素晴らしい人よ。私に謝ることなんて何もないわ」