第206章 遊びに過ぎない

辻緒羽は色の名前を聞いて、表情が明るくなり、彼女に尋ねた。「色は病気が治ったの?」

石田文乃は「もう治ったわ」と答えた。

林格史は額に黒線を浮かべ、恋愛というものはこんなに複雑なのかと思った。彼には理解できなかった。

彼が知っているのは、以前の緒羽様が学校に行くのは、曽我若菜を追いかけるためだけで、それ以外の目的はなかったということだ。

彼は本当に緒羽様が彼女に深い愛情を持っていると思っていたのだ!

石田文乃はため息をつきながら言った。「緒羽様が若菜を追いかけたのは、黒田夜寒の機嫌を損ねるためだけよ」

彼はもう我慢できなかった。緒羽様に長年仕えてきたのに、何も知らなかったとは。緒羽様と黒田夜寒は仲が悪く、若菜を追いかけたのは彼の機嫌を損ねるためだったのだ。

緒羽様が誰かを追いかけるのは、その時の気分次第。今日は若菜を、明日は色を、明後日は他の誰かを追いかける。ただの遊びで、本気にはならない。

ただし、若菜は確かに彼が最も長く追いかけた相手だった。黒田夜寒と賭けをしてから追い始め、追いかけるだけでなく、町中の噂にもなるほど大々的にやった。

しかし、若菜というホワイトリリーは、駆け引きが上手で、婚約者もいたため、当然簡単には緒羽様を受け入れなかった。

林格史はここまで聞いて、やっと理解したようで、頭を掻きながら「なるほど。緒羽様、すぐに取り掛かります」と言った。

彼は不思議に思っていたのだ。緒羽様がここ数ヶ月、なぜ若菜を探さなくなったのか。黒田夜寒がいないのに、誰に見せる芝居なのか?

「ちょっと待って、私も一緒に行くわ」石田文乃は立ち上がり、辻緒羽を見つめて「招待状を頂戴」と言った。

彼女の祖父は確実に招待状を受け取るはずだが、彼女にはないのだ。由右の絶世の美貌を見たいし、何より日幸を守るためだった。

辻緒羽は石田文乃に招待状を渡した。

石田文乃は派手なオープンカーを運転し、車内には辻緒羽が買ったバラの花が満載だった。門番にどう説明したのかは分からないが、すんなりと中に入れてもらえた。

しかし、黒田夜寒と若菜どころか、水野日幸にも会えなかった。

浅井長佑は彼女に、水野日幸がつい先ほど帰ったと伝えた。

水野日幸は用事を済ませ、浅井家の当主に挨拶をしてから帰ったのだ。

車が長谷川邸の前を通り過ぎる時。