第208章 彼女と一緒に

葛生は彼に目配せをして、余計なことを言わないように促した。

長谷川深の声は少し掠れていた。老人を見つめながら尋ねた。「玄関の女の子は、まだいるのか?」

老人は一瞬戸惑い、頷いた。「今、傘を渡して、家に帰るように勧めたところです。」

長谷川深は軽く返事をし、葛生に付いてこないように言って、車椅子を玄関まで動かし、静かに門の方向を見つめていた。

老人はようやく小声で葛生に尋ねた。「あの娘が、若様がお探しの方なのですか?」

葛生は頷いた。「はい。」

老人は悔やむように溜息をつき、とても心配そうに言った。「上着を貸してあげるべきでしたね。こんなに寒いのに、風邪でも引いたらどうしましょう。」

あの娘は、若様の命を救ってくれた娘さんなのだ。笑顔が本当に可愛くて、温かくて、若様が彼女のことを忘れられないのも無理はない。