第356章 拗ねて引きこもり

葛生は驚いて、なんてことだ、これはなんという挑発的な言葉だろう、水野お嬢様はわざとボスを誘惑しているのではないか!

水野日幸はついに堂々と彼の前に立った。壁を隔てることなく、面と向かい合って、真摯な様子で首にかけていたフルーツキャンディのネックレスを外し、さっと近づいて彼の首にかけた。目を細めて笑いながら、甘く澄んだ声で「誕生日プレゼントよ」と言った。

長谷川深は少し目を伏せ、首にかかったネックレスを見つめた。それは少女が普段から大好きなフルーツキャンディを一つ一つ繋げたもので、とても可愛らしく、彼女らしいものだった。

キャンディの甘い香りがかすかに漂ってきたが、それは彼女の笑顔の万分の一ほどの甘さもなかった。

水野日幸は人を誘惑し、プレゼントを渡した後、今度は真面目な表情になり、ケーキの横にしゃがんで、葛生に手を伸ばした。「ライター貸して」

葛生は急いでライターを渡しながら、心の中で感服した。水野お嬢様はすごい、見事だ。ボスの反応を見ると、さっきの誘惑で堪えられなくなったに違いない!

そうだよな、ボスはちょうど精力絶頂の年頃だし、好きな女の子にこんな風に誘惑されて、反応しないなんて普通の男じゃないよ。

水野日幸はろうそくを再び点灯し、男性の前にしゃがんで、期待に満ちた目で見つめながら、笑顔で言った。「お兄さん、お誕生日おめでとう。早くろうそくを吹き消して願い事してね」

長谷川深の心は乱れ、抱きしめた少女の温もりがまだ残っているようで、暖かく、柔らかかった。

彼はずっと少女に注目していて、ケーキに気付いていなかったが、今になってケーキの上の絵に気付いた。それは彼と彼女と飴の絵だった。「君が作ったの?」と尋ねた。

水野日幸は小鳥のようにこくこくと頷き、顎を上げて褒めてもらいたそうに、可愛らしい様子で「きれい?」と聞いた。

長谷川深は目の前の彼の太陽のような存在を見つめ、笑顔で頷きながら、少しかすれた声で「きれいだよ」と答えた。

「早くろうそく吹いて、消えちゃうよ」水野日幸は小さな手で彼の服の裾を引っ張り、急かすように言った。

長谷川深の唇の端の笑みが深くなり、少女が自分より焦っている様子を見て、両手を合わせ、真面目な表情で願い事をし、目を閉じて一つの願いを込めた。