第389章 犬の餌で死ぬほど撃沈される

田中澪子は恥ずかしさのあまり、床に落ちた小さなカードを全部拾い上げ、自分の忠誠心を示すために、涙を浮かべながらゴミ箱に捨てようとし、口の中で文句を言い続けた。「いとこが酷すぎる。腹が立つわ。帰ったら絶対に仕返ししてやる」

石田文乃が近寄って彼女を止めた。「これは私の推しの写真よ。要らないなら全部私にちょうだい」

田中澪子は心の中で血の涙を流していた。これらのカードを集めるのにどれだけ苦労したか、神のみぞ知る。石田文乃にあげるのは悔しいけど、ゴミ箱に捨てるのはもっと耐えられない。

しばらく考えた末、結局石田文乃に渡すことにした。心は血を流していたが、大好きな推しをゴミ箱に捨てるわけにはいかない。石田文乃にあげる方がまだましだ。

石田文乃は嬉しそうにカードを抱えて戻り、その中に自分が持っていない十数枚のレアカードがあることを発見して、喜びを隠せなかった。

水野日幸は前の方で思惑を隠す特進クラスの生徒たちを見て、冷笑を浮かべた。敵を倒す最良の方法は、敵を味方に引き入れる以外に、内部分裂を起こさせることだ。

田中澪子はただのイケメン好きで、その点では石田文乃と似たようなものだ。

でも彼女にはイケメン好きという性質しかなく、石田文乃のような気骨も義理も実力もない。

石田文乃は水野日幸が自分を見ていることに気付き、何かを思い出したように酸っぱい表情で尋ねた。「あなた、鈴木蛍に城戸修のカードセットを一式用意すると約束したでしょう」

水野日幸はさらりと「うん」と答えた。

石田文乃はさらに不機嫌になり、彼女を怒って見つめながら一字一句はっきりと言った。「私!も!欲しい!」

水野日幸は顔も上げずに淡々と応えた。「ああ」

石田文乃はようやく機嫌が直り、城戸修の歌を口ずさみながら、自信満々に自分を励ました。「二セット集めてみせる!」

水野日幸は心の中で、十セットでも贈れるけど、カード集めも一つの趣味だし、達成感を得たいなら自分で工夫して集めるべきだと思った。

石田文乃は田中澪子から手に入れたカードを分類しながら、つぶやいた。「日幸、カードは全部で何枚あるか知ってる?」

水野日幸は「知らない」と答えた。