第375章 道連れになりなさい

藤田清義は、白川裕が主催する地下レースがあると聞いて、藤田清明を捕まえるために急いでやってきた。

藤田清明は医学研究に没頭する以外に趣味はほとんどなかったが、レースはその数少ない趣味の一つだった。スピードとスリルの衝突で、アドレナリンが急上昇し、医学研究で行き詰まった時の新たなブレイクスルーのインスピレーションとなっていた。

十三歳から様々なレースに参加し、無敵の存在だった。しかし白川裕が現れ、彼から首位の座を奪い、人生で初めての挫折を味わうことになった。

それ以来、彼は永遠の2位となった。白川裕が参加するレースでは、常に彼の下に甘んじることとなり、それが彼の闘争心に火をつけた。必ず白川裕を打ち負かし、1位を取り戻すと決意した。

白川裕は正体の謎めいた人物で、常に神出鬼没だった。レースへの参加も気分次第で、気が向かなければ誰が頼んでも動かなかった。

1年半前のF1レースで総合優勝を果たして以来、沈黙を保っていたが、今回日本に姿を現した。

世界中のレーサーたちは事前に情報を得ていたに違いない。そうでなければ、今日これほど多くの世界クラスのレーサーが集まるはずがなかった。

瞬く間に、水野日幸の姿は雑踏の中に消えていった。

藤田清義の目は一層冷たく深くなった。弟を捕まえられなかったが、代わりに彼女を見つけた。あんな若い娘が、こんな混乱した場所で何をしているのだろう。

会場は人々の声で溢れ、非常に賑やかだった。至る所で露出の多い美女たちが見られ、美女とレースは定番の組み合わせだった。

辻緒羽が来てから、その状況を見て後悔した。心配そうな目で水野日幸を見ながら、声を潜めて言った。「経験はあるのか？」

高木美以という女は意図的に彼を騙していた。ここまでの道のりで、彼はすでに十数人の世界クラスのレーサーを見かけていた。さらには、デビュー以来無敗のレーシングキングの白川裕までいた。

このような重量級のレースは、F1に匹敵するものだった。1位を取るなど夢物語で、水野日幸はおろか、彼自身にも不可能だった。年彦兄が事故に遭っていなければ、おそらく挑戦する価値はあったかもしれない。

「やったことある」水野日幸は誰一人知らなかったが、その名声は確かに威圧的に聞こえた。