第376話 車を奪って人を投げ出す

水野日幸はディープブルーのマクラーレンを選び、試乗してみると、すぐに感覚が戻ってきた。全身の血が沸き立ち、熱気に満ちた会場と耳に響く歓声を聞きながら、懐かしい感覚が胸に込み上げ、もう待ちきれない様子だった。

高木美以の仲間たちがすぐに戻ってきて、ナンバープレートを車に貼り付けた。

このラウンドでは、水野日幸の他に、高木美以と彼女の二人の仲間が車をレース場に運び込んだ。

高木美以は車の中から、窓越しに水野日幸と辻緒羽を見つめ、目に悪意を宿らせながら、彼らの車体についている数字、4番を見た。

4、死。どうやら今日、この二人は死ぬしかないようね。彼らの死を望んでいるのは私だけじゃない、神様も早く死んでほしいと思っているのよ、これは天意だわ。

水野日幸は突然振り返り、冷たい眼差しで、まるで剣のように高木美以の方向を見つめた。何か良からぬことを企んでいる気がした。