第525章 応援するよ、彼女を追いかけて!

観客席の方で、目の良い鈴木蛍が彼女の視線の先を追うと、驚いた様子で「緒羽様、あれは一橋渓吾じゃないですか?」

映画の撮影に行ってたはずなのに、どうしてここにいるの?

へぇ、あの地味そうな人も、実はアイドルのファンだったんだ。

辻緒羽がその方向を見ると、本当に一橋渓吾だった。ステージ上の石田文乃を見て、この二人、怪しいな!

鈴木蛍は、彼がモッシュピットで人々に押されているのを見て可哀想に思った。きっと内野席のチケットが高くて買えなかったんだろう。モッシュピットの方が座席より随分安いし。腕を振りながら大声で叫んだ。「一橋渓吾!」

この辺りは国際クラスの生徒たちで、その外側も第四中学校の生徒たち。みんな同じ学校の仲間だから、彼のために場所を空けるのは簡単なことだった。

一橋渓吾は誰かが自分を呼ぶのを聞いて振り向いた時、左側の人に押されてサングラスが外れてしまった。サングラスを拾おうとしたが、動く隙間すらなく、誰かの足に踏まれて壊れてしまうのを見て、少し残念に思った。

その一瞬の隙に、マスクまでも誰かにひっかけられて外れてしまった。

周りには女性が多く、彼を見た途端に思わず目を輝かせ、誰かが「イケメン!」と叫ぶと、多くの人が彼の方を見た。

イケメン、特に気品のある超イケメンは、人が多い場所では特に目立つもので、まるでオーラを放っているかのように、人々の目を引きつけた。

「すごくかっこいいね、どこかで見たことあるような?」

「私も見たことがある気がする」

すでに人々は囁き合い始め、大胆な女性たちは彼の側に寄って話しかけようとした。アイドルファンなら共通の話題もあるだろうし、もしかしたら同じアイドルのファンかもしれない!

「一橋渓吾、こっちに来て!」鈴木蛍は再び手を振って大声で呼び、彼が誰のファンなのか気になった。

一橋渓吾は家庭環境があまり良くないことを、みんな知っていた。彼にとって、アイドルを追いかけるのは贅沢な行為のはずだ。結局、熱心なファンになるには、アイドルのためにお金を使い続けなければならないのだから。

特にこういったオーディション出身のアイドルは、正直言って、ファンのお金で作り上げられたようなものだ。