第570章 その顔はどこか見覚えがある!

道中、江川歌見は彼女と会話を試みていた。人を知るには、外見を見るだけでなく、その人の話を聞くのが一番いい方法だからだ。

彼女を一目見た時から、どこかで見覚えのある顔だと感じていた。しかし、具体的にはどこで見たのか思い出せなかった。

この出雲七という脚本家は、あまりにも静かだった。出会ってから今まで、挨拶と自己紹介をした以外は何も話さず、質問されても「うん」や「ああ」という簡単な返事しかしなかった。

「出雲七先生は、あまり話すのがお好きではないようですね」江川歌見は笑って言った。「私の弟子の水野日幸は、おしゃべりなのに。彼女があなたを説得できたということは、きっと親しい間柄なのでしょうね。性格は正反対ですが」

水野日幸は心の中で思った。話したくないわけではない、ただ多く話せば正体がばれてしまうかもしれないからだ。